前回の記事では、翻訳チェックの仕事について書かせていただきました。
前回の最後にも書きましたが、翻訳チェックの仕事では、訳文そのものだけでなく他にも勉強になることがあります。
それは、「コメントの書き方」です。
翻訳作業では、原文の誤りと思われる箇所の指摘、原文の解釈にどうしても不安がある場合の申し送り、原文とやや違う構造の訳文にした場合、その理由の説明を残すなど、様々なコメントをチェッカーさんや最終クライアントに申し送ります。
このコメントの書き方も、実は翻訳者さんによって異なります。
- Aさん:コメントが少なめ。原文の誤りと思われる箇所も、コメントを付けずに独自に訳を変更してしまっていることがある。
- Bさん:「~を~と解釈。」と、少し簡潔過ぎる。なぜそう解釈したのか、一言でも説明があると嬉しい。また、日英翻訳は英語ネイティブもチェックするので、コメントは英語で書いた方が親切だと思う。
- Cさん:コメントが欲しい箇所にコメントが付されていてありがたい。解釈の元になった参照先の文を短く引用したり、コメントの長さも丁度良く気が利いている。
- Dさん:なぜこう解釈したのか、参照先の文を引用して説明してくれているが、コメントが必要以上に長いことがある。独り言に近い記述もあるので、何をチェッカーに見て欲しいのか簡潔にまとめられると、もっと良くなると思う。
私は良いコメントの書き方はどんどん真似し、あまり親切でないコメントを見たときには、反面教師として同じことをしないようにします。
コメントが適切に付いていない場合、どこか詰めが甘い印象を受けてしまいます。チェッカー目線で翻訳するようになってから、自分が自分の訳文に納得するだけでなく、他の人が見ても納得できるような工夫が必要だと考えるようになりました。
一言で言えば、訳文に「思いやり」を加えられるのが優れた翻訳者だと思います。
自分もその理想を目指して、ますます精進していきたいと思います。